大井川鐵道の秘境駅めぐり
都会では味わえない変わった秘境の列車と駅
■究極の秘境駅
山の中を列車は進み、打ち捨てられた廃屋が目に入ると、減速して停車する。全国の秘境駅ランキング第2位の尾盛駅だ。当然誰も降りない。数年前にクマの出没があったとかで一時期乗降禁止になったことがある駅である。最近、クマ出没情報はないそうだが、無人駅で誰もいなければ、不安だ。なので、窓を大きく開けて車内から見学するにとどめた。無人のホームに狸の置物があるのが印象的で、本線の神尾駅と通じるものがありそうである。また、この駅には、アクセスする道路がない。一番近い道路からは山の中を抜ける必要があり、それこそクマと出会うかもしれない。秘境駅たるゆえんだ。
目も眩むような高さの関の沢鉄橋を最徐行しながら渡り、閑蔵駅に到着した。2018年12月現在、ここから終点井川駅までは土砂崩れのため不通となっていて、当面の終点だった(2019年3月に復旧予定とのこと)。
閑蔵駅はホームの回りが木立に囲まれていて秘境感が半端ない。乗務員用の詰所とトイレ以外建物はなかった。列車は入換をしてホームを移動し、1時間後の折返し列車発車まで停車する。ほかの乗客はしばらく歩いて道路のある方へ向かう。そこにはバス停があり、10分後位に千頭へ戻るバスがあるのだ。1時間半かけてやってきたのに、バスなら30分。遠くまでやってきたという有り難味がなくなる所要時間だ。それだけ道路事情がよくなったということなのだ。しかし、鉄道ファンとしては、バスは無視して1時間後の列車に再び乗りたい。幸いバス停の近くには1軒だけ食堂があったので、しばらく温かいおでんを食べて時間を過した。もっとも、このお店、週末だけの営業で、紅葉シーズンのみ平日も開店しているとのこと。ただし、冬場は冬眠して春にまた再開するとの話だ。
駅に戻ると、無人のホームに列車がぽつんと停まっていた。発車時間になると、若干乗客が現われ、直前に千頭からやってきた列車から降りてすぐに折り返す何人もの客を乗せて閑蔵駅を後にした。井川線は観光路線として人気なので廃止の話は全くなく、ユニークな路線として生き延びていくようで頼もしいかぎりである。